幼きイエズス修道会 信愛の教育
現代社会は、絶えず新しい状況を生み出しています。このような状況の中にあっても、レーヌ・アンティエとその会員が、修道会創立に当たって体験した事柄は変らない価値を持っています。それは、教育者としての私たちの召命(※)そのものが持っている価値です。
※召命・・・神から与えられた使命
教育者の最高の規範は、「人間のすべての条件を身に受けてこの世に来られ、人間性の充満・開花」へと導かれたイエスご自身です。
この規範は、常に現代的意味を持ち、どのような社会、時代、文化の中にあっても使徒的活動の中で実際に生かされなければならないと思います。
この教育の使命の故に、私たちは生命を大切にし、すべての人が生命を神からの賜として心から愛し、大切にするよう全力を尽くさなければなりません。
さらに、「私たちと共におられる神」を広く宣べ伝え、神を信じている人は、キリストの証人であることを公言しなければなりません。
教育の使命には、次のようなことが含まれています。
- 一人ひとりを大切にする。特に、社会的に弱い立場に置かれている人を大切にする。
- 知・情・意の調和のとれた人間全体の育成に努める。
- 他者を受け入れ、他者に仕える。正義、尊敬、愛、非暴力、分かち合い、公正、善意、許しなど、イエス自身が実践し、教えられた価値を忍耐強く教える。
- 創造主である神及び神がこの世にお遣わしになった神のおん子イエスに心を開く。
- 祈る心、感謝の心を養う。すべての人は平等であり、神の子となるよう招かれているということを教える。
幼きイエズス修道会信愛の教育に携わる教師は、委ねられている学生・生徒・児童・園児一人ひとりが、神から与えられている能力を十分に開発し、人々を愛し、人々に仕えながら、自己教育を続けていくよう導かなければなりません。
幼きイエズス修道会 総本部にて
総長 シスター・ルシル・タルディ
1992年7月16日
カルメル山聖母の祝日に
幼きイエズス修道会 信愛教育の源泉
幼きイエズス修道会員の使命は、「マリアを母として幼子となられた神の愛」を、特に霊的・物質的に恵まれていない地域を優先して、青少年、病人への「キリスト教教育」を通して示すことにあります。ここに幼きイエズス修道会信愛教育の源泉があります。
幼きイエズス修道会の創立者レーヌ・アンティエの愛し合う生き方は修道生活を通して「人々の中に現存しておられる愛の神」に出会うことによって、ますます豊かなものとなっていきました。神の愛を人々に知らせたい、自分が受けた霊的・物質的恵みを人々に伝えたい、貧しさのため学ぶ機会を持たない地域の人々に分かち合いたいという切なる望みは、様々な形をとって実践され、やがて学校教育へと展開されます。
ショファイユに修道会が創立された翌年には、4校を開設、10年後には70校余りの開設となりました。いずれも貧しい村、宗教的雰囲気さえも拒絶するといった、キリスト教教育の困難なところでした。
その様な場所を敢えて選んだ創立者は、キリスト教的世界観、人生観を示し、すべての人が神の子であるという意識に目覚めるよう意を注いだのです。
また、女子教育を重んじた創立者は、キリストがマリアを母として選んだ意義を通して、母の役目の大切さに目覚めさせ、「家庭のよき母」となるため、「マリアの心を生きる人」を育てることに徹したのです。
さらには学校という枠を越えて、地域社会に開かれた公開講座、グループ活動、父母の会、母親の労働の故に教育を受ける機会の少ない子どもたちのための保育所の開設、教育施設のない田舎の小さい村で読み書きを教える女性たちの養成などに努め、キリスト教教育を実践していきました。
1877年来日した幼きイエズス修道会は、崩壊した家庭の子どもたちの育成を出発点として、日本で教育事業を始めました。それ以来、教育と社会福祉が並行して幼きイエズス修道会の使徒職となっています。
子ども達一人ひとりを大切にし、与えられた諸能力を十全に開花させ、自己教育力を身につけ、社会の建設に貢献する人間を目指し、神の子としての生き方を追求するのが、「幼きイエズス修道会信愛数育」です。
この教育理念が生きられるところには、「一つの心、一つの魂」のモットーの下に集う真の学園共同体が実現することでしょう。
幼きイエズス修道会 日本管区
管区長 シスター 脇山ミキコ
1992年3月25日